辛坊治郎『日本の恐ろしい真実』

日本の恐ろしい真実  財政、年金、医療の破綻は防げるか?

日本の恐ろしい真実 財政、年金、医療の破綻は防げるか?

刮目せよ。一貫して読者に向けられているのは、そういうメッセージなのだろう。曇りなき眼で見定め、決めよと。
その姿勢と、消えた100歳問題を予見したというそれなりな炯眼は素晴らしいと思うのだけれど。なんとなくイヤらしいキャラである意味損してると思うw
本書のほとんどの議論は、公が国民に対して提示している様々なデータをあげて、その数字の真の意味や、その数字を提示すること自体の意味に斬り込みながら進む。

例えば。農水省発表の日本の食糧自給率は40%となっているが、これはカロリーベースで算出した数字であり、(世界的には一般的な)金額ベースによる食糧自給率ならば70%はある。一般にも洋食より和食は低カロリーであり、カロリーベースなら実際的な状況よりも食糧自給率を低く見せることができる。ここには、農業助成金がたくさん欲しい農水省の思惑が表れている。

そのような、常識で少し考えればおかしいとわかるのに、明らかな不正義がまかり通っているこの国の現状を次々に炙り出していく。政治や経済の知識が乏しい自分でも、こうやって一つ一つ説明してくれればよく分かる話ばかりだ。

市の子どもへの読書啓発活動の報告で、「一週間の平均読書冊数が5年間で3冊から6冊に増えた」という記述があったのを思い出す。しかし報告書では、「学校主導の読書週間における」という但し書きが抜けていた。というか明らかに省いていた。この一文だけでも突っ込みどころが多すぎて、ブログですらいちいち指摘する気にはなれない。あまりに酷い。データを提示する側のモラルと、受け取る側のリテラシー、その両方が改めて重要だ。

また著者は、政治や企業などと共に、マスメディアの欺瞞に対する批判も痛烈に加えている。その虚構にまみれたマスメディアの顔として長年報道に荷担してきたお前が言うのか、という気持ちになる部分もある。既に読売テレビを退社したとはいえ、著者本人は今なおメディアの人だ。「恐ろしい真実」や大人の事情によってテレビでは言えないことがあるのも、わからないではないけど。


p123 とどのつまり政治とは、「国民から集めた税金を、何に使うかを決定するプロセス」だ。

p167 教育の場を自らの思想流布の場と考える異常な教師たち >>確かに、教師をやってる友人たちにしても、マクロに社会や教育を考えながら教壇に立っているだろうか。社会的意義からいって、ミクロな授業をこなせば良いという考えでは明らかに足りない。